使者「異端めっ! その口を閉じろっ」 ビシィッ!
メイド姉「閉じませんっ。
わたしは“人間”ですっ。
もうわたしはその宝物を捨てたりしないっ。
もう虫には戻りませんっ。たとえその宝を持つのが辛く、
苦しくても、あの冥い微睡みには戻りはしないっ。
光があるからっ。
優しくして貰ったからっ!」
使者「この異端の売女めに石を投げろ! 何をしているのだ。
民草たちよ、この者のに石を投げ、その口を閉じさせよっ!
石を投げない者は全て背教者だっ!!」
ざわざわざわ、ざわざわざわ
メイド姉「投げようと思うなら投げなさいっ。
この狭く冷たい世界の中で、家族を守り、自分を守るために
石を投げることが必要なこともあるでしょう。
わたしはそれを責めたりしないっ。
むしろ同じ人間として誇りに思うっ。
あなたが石を投げて救われる人がいるなら、
救われた方が良いのですっ。
その判断の自由もまた人間のもの。
その人の心が流す血と同じだけの血をわたしは流しますっ」きっ
冬寂王「……っ」ぎりっ
メイド姉「しかし、他人に言われたからっ
命令されたからと云う理由で石を投げるというのならばっ!
その人は虫ですっ。
己の意志を持たない、精霊様に与えられた大切な贈り物を
他人に譲り渡して、考えることを止めた虫ですっ。
それがどんなに安逸な道であっても、
宝物を譲り渡した者は虫になるのですっ。
わたしは虫を軽蔑しますっ。
わたしは虫にはならないっ。
わたしは“人間”だからっ」